ひとり社長とは?個人事業主との違いとメリット・デメリットを解説

最終更新日:2020年9月7日

「ひとり社長って個人事業主とはちがうのかな」
「自分の場合、ひとり社長になるとどんなメリットがあるんだろうか」

「ひとり社長」とは一人で会社を設立し、従業員を雇わずに会社のすべての業務を一人でこなす社長のことです。

例えばシステムエンジニアやコンサルタント、デザイナーなど、ひとりで仕事を請け負って生計を立てるフリーランスの方々の中には、ひとり社長として業務をこなしている方も多くいます。

これを聞くと普通の個人事業主と同じではないかと思う方もいるかもしれませんが、個人事業主とひとり社長には法律や税金、年金など、様々な面で大きな違いがあります。

  ひとり社長 個人事業主
収入 会社の利益 個人の利益
税金 法人税 所得税
保険 厚生年金 国民年金

そして実はフリーランス、個人事業主の方の中には、売り上げや状況によって全く同じ業務でも個人で仕事を行うよりも法人化してひとり社長として活動する方がメリットがあるケースも少なくありません。 

もちろんひとり社長になることによって生じる手間やリスクもあり、良いことばかりではありません。

このため自分がひとり社長になった方がいいのか個人事業主のまま働いた方がいいのか、判断を迷っている方も多くいるのではないでしょうか。

そこで今回は、以下の5つの点からひとり社長について詳しく解説します。

・ひとり社長とは?
・個人事業主との違い
・ひとり社長になることによって得られるメリット
・ひとり社長のデメリット
・ひとり社長を検討すべき人、検討すべきでない人

さらに後半では、以下のポイントからひとり社長になるための手順と注意点を解説します。

・ひとり社長になるための5つのステップ
・ひとり社長として働く上で注意しておきたい3つのポイント

この記事を読めば自分がひとり社長になるべきかどうかを正しく判断することができ、ひとり社長としての手続きや業務を迷うことなく進められるようになります。

1.ひとり社長とは?

個人事業主と同じように一人で業務を行いながら、ひとりで会社を立ち上げ、個人としてではなく会社として業務を請け負う人のことをひとり社長と言います。

例えば

・コンサルタントとしてさまざまな講演活動を行っている人
・フリーランスのシステムエンジニアとして多くの顧客を抱えている人
・ウェブデザイナーとして安定した収入を得ている人

など、特に高収入のフリーランスの人の中には会社を起こし、ひとり社長として働いている人も少なくありません。
詳しくはメリットの章で解説しますが、個人事業主として働いている人の中で、安定してある程度の収入のある方は会社を起こしてひとり社長になった方がお得なケースが多くあります。

次章からは個人事業主とひとり社長の違いを具体的に解説していきます。

2.ひとり社長と個人事業主との違いを解説

ひとり社長と個人事業主の最も大きな違いは事業の主体が個人ではなく法人になるという点です。

個人事業主の場合、事業と経営者は一体ですが、ひとり社長の場合、法律上は事業を行うのはあくまでも法人であり、経営者ではありません。

この違いが、税金や社会保険など様々な面での違いを生み出します。

  個人事業主 ひとり社長
事業主体 個人 法人
収益 個人のもの
(売り上げから経費を引いた差額全てが個人の収入になる)
法人のもの
(ひとり社長個人の収入は役員報酬として会社から支払われる)
負債 個人名義で融資を受ける 会社名義で融資を受けることができる
主な税金 所得税(累進課税) 法人税(税率は収入にかかわらず一定)
社会保険 国民年金・国民健康保険 厚生年金

 

2-1. 収益面での違い

最も大きな違いは個人事業主の場合、利益は全て個人のものですが、ひとり社長の場合、利益はすべて、一旦会社のものになるという点です。もちろん融資などでも同様の違いが生じます。

個人事業主の場合
売り上げから経費をいた差額が全て自分の収入になる
・融資などが必要な場合は個人の名前で借りる

ひとり社長の場合
・事業主体は法人であり法律上は業務によって生じる利益は全て会社のもの
・融資を受ける主体は法人になる

このためひとり社長は個人の財布と法人の財布を完全に分けて管理する必要があります。法人の場合はより厳密な会計処理が求められることになりますが、次章で解説するように、これによって享受できるひとり社長のメリットも数多くあります。

また、ひとり社長の個人としての収入は会社から役員報酬として支払われることになりますが、これは会社にとっては人件費、つまり経費ということになります。

2-2.税金面での違い

ひとり社長と個人事業主では、払わなくては行けない税金も、利益にかかる税金の税率も変わります。

個人事業主の場合
・事業所得としての収入に対して所得税が課税される。

ひとり社長の場合
・会社の利益に対して法人税が課税される

個人事業主が支払う所得税の税率は累進課税のため収入が増えれば増えるほど税金の額は大きくなります。これに対して法人税の税率は定率です。次章で詳しく解説しますが、この税金の違いがひとり社長にとって大きなメリットとなる場合もあります。

2-3.国民年金か厚生年金か

ひとり社長と個人事業主の最も大きな違いの一つに社会保険加入が必要になる点が挙げられます。

個人事業主の場合
国民年金、国民健康保険に加入する

ひとり社長の場合
厚生年金への加入が義務となる

個人事業主の場合は国民年金と国民健康保険を利用している方が大半ですが、健康保険法第3条と厚生年金保険法第9条では「適用事業所に使用される者」は厚生年金に加入しなくてはいけないとされているため、会社を設立してひとり社長になると厚生年金に入ることが義務付けられることになります。

ひとり社長は会社の持ち主であって従業員ではないので厚生年金に入る必要はないのではないか、と思われる方もいるかもしれませんが、「適用事業所に使用される者」には法人から報酬を受け取るすべての人が当てはまることになるため、社長であっても会社から何らかの報酬を受け取っている限りは必ず厚生年金に加入しなくてはいけません。

3.ひとり社長になることで得られる6つのメリット

ここからはこれまで見てきた個人事業主との違いを踏まえて、ひとり社長になることによって享受できるメリットを6つの視点から詳しく解説していきます。

・社会的信用度が上がる
・赤字を9年間繰り越せる
・法人設立後2年間は消費税の支払いが免除される
・収入が増えれば節税効果が高い
・認められる経費の幅が広がる
・役員報酬で安定的な収入を実現できる

それでは一つづつ確認していきましょう。

3-1.社会的信用度が上がる!

法人化することによって社会的な信用度は格段に上がります。「法人」とは「正式に国に登記されている事業者であることの証」であるため、ビジネスを展開する上で様々な点で有益です。

例えば個人事業主に比べて財務諸表が厳密に作成されることになるため、金融機関からの融資は受けやすくなります。融資を受ける場合、個人事業主は保証人が必要ですが、ひとり社長であれば代表者の保証だけで済むケースも多くあります。

また、公共機関や大手企業の中には、法人でなければ取引口座開設が許可されないというケースも珍しくありません。また業種によっては、個人への発注が偽装請負の疑いを持たれることを避ける目的で個人事業主に法人化を求めてくるケースもあります。

ひとり社長になると、名刺に社名が書かれているだけで相手の反応が変わるという体験をする方も多くいます。肩書きやステータスは、それだけでも大きな信用を生むツールなのです。

3-2.赤字を9年間繰り越せる

ある年度で赤字が出ると、翌年以降の申告では、その赤字額と同じ額を繰越欠損金として計上でき、その金額を相殺し終わるまで法人税や所得税の支払いは免除されます。

ただ、この繰越のできる期間が個人事業主とひとり社長で大きく異なります。個人事業主の場合、決算で赤字となった際に損失を繰り越すことができる期間は3年しかありませんが、ひとり社長は赤字を9年まで繰り越すことができるのです。

高額な設備投資などが必要になる場合は特定の年度に大きな赤字となるケースも珍しくなく、状況によっては大変大きなメリットになります。

例えばある年度に大きな設備投資などを行い、2500万円の赤字が発生し、その後5年間、500万円ずつの利益によって相殺する場合を考えてみましょう。

個人事業主の場合
繰越欠損金は3年間のみのため、3年目までの利益、500 × 3 =1500万円までは、税金はかかりませんが、4年目、5年目の利益、1000万円には所得税が課税されます。
4年目、5年目は、年間の所得500万円にかかる所得税15万円、住民税25万円、計40万円を支払わなくてはいけません。2年間の合計は80万円になります。

ひとり社長の場合
繰越欠損金は9年間認められるため、赤字相殺までの5年間、法人税は0円です。

つまり上のケースでは、個人事業主の支払う税金はひとり社長より80万円多いということになります。

様々なケースが想定されるため、額面通りというケースはなかなかないかもしれませんが、ひとり社長は、少なくとも融資の回収に時間がかかることが見込まれる状況で、大きな節税効果をもたらすということです。

3-3.法人設立後2年間は消費税の支払いが免除される

個人事業主でも売り上げが1000万円を超えると消費税を支払う義務が生じます。売り上げが1000万円を越えれば消費税は100万円を超えるため、小規模事業者にとっては大きな負担増です。

しかしひとり社長になると法人設立から2年間は消費税が免除になります(資本金が1000万円を超えない場合)。

例えばひとり社長になってからの売り上げが1年あたり1500万円あった場合、年間150万円、2年間で300万円の節税が実現することになります。

このため、この売り上げ1000万円の達成に合わせて、事業を法人化してひとり社長になる個人事業主の方も少なくありません。

3-4.収入が増えれば節税効果が高い

1章でも触れた通り、個人の所得税が累進課税であるのに対して法人税は定額です。このためひとり社長の場合は収入が増えれば増えるほど個人事業主よりも節税効果が大きくなります

例えば個人事業主の場合、年間の所得が1,800万円を超えると所得税の税率は40%になります。これ以外に住民税や個人事業税などの税金を含めると、実効税率(総所得に締める税金の割合)は50%になってしまうケースもあります。

それに対してひとり社長の場合、法人税は事業収入800万円以下で15%、800万円をこえる収入に対しては23.2%となり、それ以上に上がることはありません。このため法人事業税や法人住民税を納めても実効税率は収入の40%程度まで抑えることができます。

1,800万円の収入がある場合、ひとり社長には総所得の10%、つまり年間180万円の節税効果があるということになります。

3-5.認められる経費の幅が広がる

個人事業主の場合、家計との線引きがむずかしいという点から、事業の経費として認められる費用の幅は限定されますが、ひとり社長の場合はこの幅が広がります。

例えば自動車や生命保険などを法人の経費とすることができるようになります。特に自宅で仕事をする場合は自宅兼事務所として事務所経費を計上することもできるようになるため、大きなメリットになります。

3-6.役員報酬で安定的な収入を実現できる

ひとり社長のメリットは役員報酬としての個人の収入を自分で決めることができる点です。

赤字、黒字にかかわらず給料として一定額を支払うことを決めておけば、会社の売り上げに変動があっても個人の収入を安定させることができます。安定的な収入は住宅ローンを組む際などには大変有利です。

また役員報酬には給与所得控除が適用されるため、節税の効果も期待できます。

4.ひとり社長のデメリット

ひとり社長には多くのメリットがある一方で、様々なデメリットも存在します。ここでは代表的な3つのデメリットを紹介します。

・会社設立費用がかかる
・税理士費用がかかる
・赤字でも税金を払わなくてはいけない

それでは一つずつ解説していきます。

4-1.会社設立費用がかかる

会社を設立するには様々な手続きを行う必要があり、それぞれの手続きには印紙代や税金など30万円程の費用が必要になります。

内訳はざっと以下の通りです。

・登録免許税(15万円〜)
・定款認証手数料(5万円)
・定款謄本代 (2,000円程度)
・登記簿謄本代(1件あたり600円)
・印鑑証明書代(1枚あたり450円)

これらに行政書士や司法書士に依頼する代行費用を加えると、さらに上乗せで費用がかかることになります。

もちろん個人事業主であればこれらの費用は一切かかりませんので、この費用はひとり社長になることを決断する上で、一つの障害であると言えるでしょう。

4-2.税理士費用がかかる

個人の場合は税理士に依頼しないでひとりで確定申告する方も珍しくありませんが、法人になるとそうはいきません。会計処理も煩雑になり手間も増えるうえ、務調査の頻度も個人事業主に比べて高くなるため、いい加減な経理や確定申告を行うわけにはいきません。

このため法人決算は税務のプロである税理士に依頼することになります。

税理士に法人決算を頼む場合は最低でも年間10万円の費用が必要になります。税理士と顧問契約を結ぶ場合は月1万円程度の顧問料がかかることにもなります。

個人事業主であれば自分で確定申告を行えば無料ですし、税理士に依頼したとしても5万円を超えることはあまりありません。

4-3.赤字でも税金を払わなくてはいけない

法人の場合は赤字であっても法人住民税を支払う義務があり、払わなければいけない税金があります。

地方税として都道府県に収める法人住民税は事業所得の額にかかわらず定額で支払わなくてはいけない均等割が定められており、最低でも年間70,000円の税金を支払う必要があります。

またひとり社長の場合、自分の給料は役員報酬、つまり経費として法人から支払われることになりますが、役員報酬はひとり社長個人の収入になりますので、この役員報酬に対しては所得税が発生することになります。

5.ひとり社長を検討すべき人・検討すべきではない人

ひとり社長はどのような方にメリットが大きく、どのような方には向かないのでしょうか。これまで見てきたメリット、デメリットを踏まえて具体的に見ていきましょう。

5-1.年収500万円以上の方はひとり社長を検討すべき

ひとり社長を検討する指標として多くの人が重視するポイントは支払う税金の総額です。そしてひとり社長が税金でメリットを得るためには、ある程度の収入があることが条件になります。ではどのくらいの収入の方がひとり社長を検討すべきなのでしょうか。

結論から言うと安定的に年間500万円以上の収入を得ている方は、ひとり社長を検討すべきです。ひとり社長の場合、役員報酬の設定する金額の違いによって支払う税金の総額が違ってくるため、単純な比較は難しいですが、税金の総額が最大になるケースを想定しても年収500万円を境にひとり社長の方が税金の総額が安くなります。

年収あたりの税金総額を具体的に計算してみましょう。
個人事業主の税金は所得税+住民税+個人事業税で算出されます。これに対してひとり社長は法人税+役員報酬にかかる所得税+住民税が支払う税金の総額です。

例えば年収300万円、500万円の場合に、個人事業主とひとり社長の税金総額はそれぞれいくらになるでしょうか。以下の計算は、個人事業主については収入にかかる所得税、住民税、個人事業税の合計、ひとり社長については同額の収入がある場合で、法人の利益が0円になるように役員報酬を設定した場合に支払う税金の総額を計算しています。

年収300万円の場合
個人事業主:所得税100,000円+住民税190,000+個人事業税5,000円=合計295,000円  
ひとり社長:法人税70,000円+所得税100,000円+住民税190,000=合計360,000円 
(個人事業主の方が65,000円安い)

年収500万円の場合
個人事業主:所得税270,000円+住民税350,000+個人事業税110,000円=合計720,000円  
ひとり社長:法人税 70,000円+所得税270,000円+住民税350,000=合計690,000円 
(ひとり社長の方が30,000円安い)

下の表は、この計算に従って出した個人事業主とひとり社長の年収毎の税金総額です。収入500万円を境にひとり社長と個人事業種の税金総額が逆転し、収入が増える毎にその差が大きくなっていくことがわかります。

 

事業収入(年収) 個人事業主 ひとり社長 差額
200万円 18万円 25万円 個人事業主の方が7万円安い
300万円 29.5万円 36万円 個人事業主の方が6.5万円安い
400万円 49万円 51万円 個人事業主の方が2万円安い
500万円 72万円 69万円 ひとり社長の方が3万円安い
600万円 101万円 93万円 ひとり社長の方が8万円安い
700万円 132万円 118万円 ひとり社長の方が14万円安い
800万円 164万円 146万円 ひとり社長の方が18万円安い
900万円 197万円 173万円 ひとり社長の方が21万円安い
1000万円 232万円 203万円 ひとり社長の方が29万円安い
1500万円 463万円 409万円 ひとり社長の方が54万円安い
2000万円 706万円 628万円 ひとり社長の方が78万円安い

ひとり社長の場合、役員報酬を抑えて法人税を払う形に切り替えれば、さらに大きな節税効果を得ることができるでしょう。

もちろんひとり社長の場合、税理士費用や厚生年金費用などで個人事業主よりも多く費用がかかるため、収入500万円以上のすべての方にひとり社長のメリットがあるわけではありません。しかし少なくとも500万円以上の事業利益を安定的に見込める方には、一度ひとり社長になることを検討してみる価値はあると言えるでしょう。

5-2.事務処理の増加が耐えられない方にはひとり社長は不向き

ひとり社長の場合は一人でも会社組織となるため厳密な会計ルールが求められることになります。

また会計処理の他にも、社会保険の手続きや法務局への役員や定款の変更登記など、事務手続きは個人事業主に比べて煩雑になり、事務処理作業の負担は大きくなります。

こういった事務処理の増加を負担に感じる方にはひとり社長はあまりお勧めできません。

もちろん行政書士や税理士、会計士などに業務を外注することはできますが、全てを外注してしまうと当然コストは増えていきます。経費としてどのくらいなら支払うことができるか、事業収入の規模に応じて判断することになるでしょう。

5-3.お金にルーズな方はひとり社長には不向き

個人事業主の場合、稼いだお金は全て自分のものですが、法人化した場合はそうはいきません。収入はあくまでも全て会社のお金であって、社長といえどもそのお金を勝手に使うことはできません。厳密な会計処理が不向きの方はひとり社長にはあまり向きません。

例えば「会社からお金を借りた」という場合はひとり社長であっても、賃借契約書を会社との間で交わし利息を払う必要もあります。

もちろん「今月は出費が多かったから会社の金をちょっと借りよう」とか、「旅行費用は会社の経費で落としてしまおう」など軽い気持ちで会社のお金を使ってしまうことは違法行為になってしまいます。

ひとり社長には常に個人のお金と会社のお金をきちんと区別し、適切に対応することが求められます。

6.ひとり社長になるための5つのステップ

ひとり社長になることに大きなメリットがあるとわかったら、早速法人化の準備を進めましょう。法務局や税務署などへ様々な手続きが必要になりますが、これから開設する5つのステップに従えれば、誰でもひとり社長になることができます。

一つずつ解説していきましょう。

6-1.法務局への届出

会社を投棄するためにはまず法務局へ以下の書類を提出する必要があります。

・登記申請書
  法人登記の申請者や添付書類、登録免許税などの概要を示す書類
・登録免許税納付⽤台紙
  登録免許税として台紙に収入印紙を貼ります(6万円)
・必要事項を記載したA4用紙
  内容を登録したCD-Rで代用が可能  
・定款
  個々の私法人の組織・活動について定めた根本規則を記した書面
・資本金の払込を証する書面
  資本金があることを証明する書類
・発起人決定書(必要な場合)
・役員の就任承諾書
・役員個人の印鑑証明書
・調査報告書(必要な場合)
・財産引継書(必要な場合)
・資本金の額の計上に関する証明書(必要な場合)
・登記すべき事項を記録した電磁的記録媒体(CD-Rなどで提出)
・印鑑届出書
  登録する印鑑は法人印である必要がある(あらかじめ法人印の準備をしておきましょう)

こうして見ると、大変な書類作成のように思われるかもしれませんが、ネット上に書類の雛形なども見つけることができるため、それほど難しい作業ではありません。

特に作成の難しい「定款」などは行政書士に依頼する方も多くますが、最近では会社設立 freeeのようなサイトで、定款も含めたすべての書類を無料で作成することもできるようになりました。設立の経費を節約したい方はぜひ利用してみてください。

すべての書類が整ったら提出前に法務局の無料相談を利用することもオススメです。法務局には1回30分程の無料相談のサービスがあり、ここで作成した書類を見せれば、書類の不備などを指摘してもらえます。

法務局の無料相談は予約制となっている場合が多いため、利用される方は一度地元の法務局へ電話で確認してみることをおすすめします。

書類に不備がなければ3〜5日ほどで登記が完了し法人番号指定通知書が会社の住所宛に送られてきます。これで法務局への登記申請は完了です。

6-2.税務署への届出

法務局への法人登記が終わったら、次に税務署へ以下の書類を提出します

・法人設立届出書
・青色申告の承認申請書
・給与支払事務所等の開設届
・源泉所得税の納期の特例承認に関する申請書
・消費税課税事業者選択届書
   (消費税課税事業者を選択する場合のみ提出)
・消費税簡易課税制度選択届出書
   (消費税の簡易課税を選択する場合のみ提出)

これらの書類を法務局への登記完了後速やかに税務署へ提出しなくてはいけません。いずれの書類も、税務署で書式をもらうことができます。ウェブサイトで書式をダウンロードすることも可能です。

書類が受理されると税務署から源泉所得税の納付書が送られてきます。この書類が届けば税務署への届出は完了です。

6-3.県税事務所への届出

会社設立から1ヶ月以内に都道府県の県税事務所に法人開始設置申請書を提出しなくてはいけません。
この書類も県税事務所に行けば記入式の書式をもらうことができます。もちろんウェブサイトからダウンロードも可能です。

6-4.市区町村役場への届出

市町村役場には法人設立等異動申告書を提出します。この書類は会社設立から1ヶ月以内に提出しなくてはいけません。こちらの書式も役場やウェブサイトで入手できます。

東京23区内の場合、税務署に法人設立届出書を提出した段階で市町村役場への届出は完了したとみなされるため、提出の必要はありません。

申請書を窓口に提出すると、受領印を押してその場で返却してくれます。受け取った書類は大変重要なものですので、大切に保管してください。

6-5.年金事務所への届出

年金事務所へは以下の書類を提出する必要があります。

・健康保険・厚生年金保険新規適用届
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
・健康保険被扶養者(異動)届 (被保険者に扶養する者がいる場合)
・国民年金第3号被保険者資格取得届(被保険者に被扶養配偶者がいる場合)
・保険料口座振替納付申出書(支払口座振替を希望する場合)

これらの書類の中には会社の登記完了から5日以内に提出しなくてはいけないものもあるため、法務局への登記が完了したらできる限り急いで提出しましょう。

書類を提出して2〜3週間で会社宛てに健康保険証、そして厚生年金健康保険料納付書が郵送されます。

従業員を雇用する場合はさらに労働基準監督署への届出が必要になりますが、ひとり社長の場合は必要ありません。

マイナポータルを利用した法人設立ワンストップサービスで法人設立手続きが簡単に!

2020年1月から内閣府が始めた法人設立ワンストップサービスを利用すれば、法人登記に必要な各種届出をすべてウェブ上から行うことができます。

このサービスを使えば法人登記後に税務署、県税事務所、市区町村役場、年金事務所などへの書類提出をすべてウェブから一括で完了することができます。

サービスの利用にはマイナンバーカード、ICカードリーダー、インターネットに接続できるPC、そして法務局で法人登記後に発行できる登記事項証明書が必要です。

現時点では残念ながら法務局が行う定款認証と法人設立登記については対応していませんが、2021年2月からは法務局の手続きも含めた全ての法人設立手続きが一元化され、ワンストップで対応できるようになります。

法人設立ワンストップサービス

 https://app.e-oss.myna.go.jp/Application/ecOssTop/
内閣府HP(サービス概要)
 https://www.cao.go.jp/bangouseido/myna/index.html

7.ひとり社長として働く上で注意しておきたい3つのポイント

起業してひとり社長になってもおよそ半数が会社をたたむという統計もあります。従業員のいないひとり社長とはいえ会社を維持することは簡単ではありません。

そこでここからはひとり社長として会社を維持する上で注意しておきたい具体的な3つのポイントを解説します。

6-1.役員報酬の金額は慎重に決めるべき

ひとり社長が会社から受け取る役員報酬は、事業年度ごとに一定額を決定するため、年度の途中で勝手に変えることはできません。

役員報酬が変更できるのは年に1回だけです。また変更が許されるのは年度開始から3ヶ月以内と定められています。想以上に儲かったから役員報酬を増やす、また損失が増えたから役員報酬を減らす、ということはできません。

年度の途中で勝手に役員報酬を増やすと、増やした分の報酬は会社の経費としては認められないため、会社にとっては大きな損失となります。

このため、役員報酬はその年度の会社の利益を冷静に見定め適切な金額を設定する必要があります。

6-2.「経費」の捉え方の違いを意識する

例えばある支出が経費として認められず、個人の支出として処理することを求められた場合、ひとり社長と個人事業主の間で以下のような違いが現れます。

・個人事業主の場合
 社長自らの出費として変更され所得税が増額となる

・ひとり社長の場合
 支出は会社から社長に支払われた役員報酬として処理される。

ひとり社長の役員報酬の増額は認められないため、会社の損金(経費)として計上することもできません。このためひとり社長の場合、法人税、所得税の両方が増額となるということになります。

ひとり社長の場合、曖昧な会計処理は個人事業主に比べて大きなリスクとなるため、注意が必要です。

6-3.消費税の中間申告・中間納付が必要な場合がある

個人事業主の場合。消費税の納付は1年おきですが、ひとり社長になると売り上げに応じて中間報告が必要になるケースがあります。

法人の場合、前年度の年税額48万円を超えた場合は金額に応じて1回以上の中間申告・納付が義務づけられています。

・48万円超400万円以下:年1回(6カ月に1回)
・400万円超4,800万円以下:年3回(3カ月に1回)
・4,800万円超:年11回(毎月)

納付が遅れると延滞金も発生するため注意が必要です。

7.ひとり社長になる上で参考にしたい本3冊

最後にひとり社長になるために、またひとり社長になることを検討するにあたって、参考になる本を3冊紹介します。

内容はひとり社長の心構えやビジネスの進め方から経理や税金対策まで多岐に渡りますが、いずれも実際にひとり社長になった人の経験がふんだんに織り込まれており、大変参考になる本ばかりです。

7-1. ひとり社長の稼ぎ方・仕事のやり方 (アスカビジネス)

ひとり社長の稼ぎ方・仕事のやり方 (アスカビジネス)

さまざまな会社を立ち上げてきた著者が、ひとり社長の会社の立ち上げ方や仕事の進め方、経営を軌道に乗せるために大切なノウハウをわかりやすく説明しています。

筆者自身の豊富な経験に裏付けされた内容は大変参考になります。特に多く語られてる失敗談とその対処法は実際にひとり社長になる上で、必読の内容になっています。

 

 

 

 

7-2.新版 ひとり社長の経理の基本

新版 ひとり社長の経理の基本 (日本語) 単行本(ソフトカバー)

ひとり社長になると必ず直面する経理の問題を、わかりやすく解説しています。

実際に経理を行う上で必要になる知識や行わなければいけない業務だけでなく、クラウド会計ソフトの活用方法や、決算や申告業務の簡潔化、経理をより楽に行うために利用できる便利なITツールなど、経理を行う上で役に立ち様々な情報を得ることができます。

 

 

 

7-3.日本一わかりやすい ひとり社長の節税 〜税理士YouTuberが“本音”で教える〜

日本一わかりやすい ひとり社長の節税 〜税理士YouTuberが“本音”で教える〜

本書では、ひとり社長にとって厄介な税金の問題をわかりやすく解説しつつ、さまざまな節税の対策について詳しく説明しています。

住んでいる家を社宅として節税する方法や役員報酬の最もお得な金額、債務や経費の計上の仕方で法人税を下げる方法など、ひとり社長であればすぐに使える節税のテクニックが満載です。

 

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか

そこで今回はひとり社長について、以下の5つのポイントから詳しく解説しました。

・ひとり社長とは?
・個人事業主との違い
・ひとり社長になることによって得られるメリット、
・ひとり社長のデメリット
・ひとり社長を検討すべき人・検討すべきでない人

さらに後半では、ひとり社長になるための手続きと、ひとり社長となってから業務の上で注意する点、またひとり社長にとって必要な情報を得ることができる参考書籍3冊を紹介しました。

ひとり社長には多くのメリットとともにデメリット、リスクも存在します。ひとり社長になることが良いかどうかは、収入や置かれている状況によって判断が分かれるため、冷静な判断が必要となります。

この記事が、ひとり社長を検討される皆さんの一助になれれば幸いです。

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