会員制ビジネスとは?5種類のモデルと知るべき成功・失敗の事例
会員制ビジネスとは、利用者がお店やサイトなどで会員となり、商品やサービスの一定期間の利用料金を事前に定額で支払うことで、会員としての権利を受けるものです。
会員を集めるサービスの提供者の立場からみると、会費などで毎月安定した収益を見込めるビジネスモデルと言えます。
最近は法人だけでなく、個人でもメルマガの有料会員などを集めることで、会員制ビジネスを展開しています。
さまざまな業種や業態で採用されている会員制のビジネスモデルですが、これから始めたいという方は、まずは会員制ビジネスがどんなものかについて、しっかり押さえておく必要があります。
<この記事でわかること>
- 会員制ビジネスとは
- 会員制ビジネスの種類
- 会員制ビジネスが注目される理由
- 会員制ビジネスのメリットとデメリット
- 会員制ビジネスの成功事例
- 会員制ビジネスを取り入れるべき人
- 会員制ビジネスの始め方
また、会員制ビジネスを始めるにあたり知っておくべき【退会防止策】についても、具体的な事例を挙げてご紹介します。
記事の最後には、会員制ビジネスを始めるにあたり読んでおきたい書籍もご紹介していますので、どうぞお役立てください!
1. 会員制ビジネスとは
冒頭でも述べたように、会員制ビジネスとは利用者がお店やサイトなどで会員となり、商品やサービスの一定期間の利用料金を事前に定額で支払うことで、会員としての権利を受けるものを指します。
利用者の視点でざっくり言ってしまうと「有料で会員になっただけの特典があるもの」です。
対象となる商品やサービスはたくさんあります。
- フィットネスクラブやゴルフ場などの施設利用
- 塾やお稽古など月謝制の学びや習い事
- コーチやコンサルタントなどの専門指導
- 芸能人などのファンクラブ
- メルマガや映画など有料コンテンツの閲覧
どのケースにおいても、利用者が会費を払ってでも得たいと思うような、商品やサービスそのものの独自の魅力、または特典があることが大前提となります。
特典にもいろいろあります。
フィットネスクラブやゴルフ場の施設利用などは、「一定以上の頻度で利用すれば割安になる」という金額的なお得感が特典になります。
一方、メルマガや芸能人のファンクラブなどは、「会員でしか得られない情報を得る」ことが特典です。
会員制ビジネスは、この他にも飲食や美容、小売、サービスなど、さまざまな分野、業種で、顧客の囲い込みのために展開されています。
2. 会員制ビジネスは5種類ある
会員制ビジネスは、次の5種類に分けることができます。
- 施設型
- コミュニティ型
- 人的サービス型
- 情報提供型
- 商品提供型
この5種類は完全に分離したものではなく、例えば料理教室は、「施設型」「人的サービス型」「情報提供型」の複合といえます。
また、家庭教師は「人的サービス型」ですが、塾や予備校は「施設型」「情報提供型」「人的サービス型」の複合です。
ひとつの型だけで強力な魅力に特化することもできますし、型を複合することで、競合が真似のしにくいビジネスにすることもできます。
それぞれ、内容を詳しく見ていきましょう。
2-1. 施設型
施設型の会員制ビジネスとは、施設を用意してそこでさらにサービスを提供するものです。サービスの利用に別途料金のかかるものもあります。
フィットネスクラブやゴルフ場などに代表されます。
「施設型」単体で運用する場合は、施設の充実度が魅力を大きく左右します。
実際には施設の魅力だけで会員を維持し続けるのは難しいため、「人的サービス」や「コミュニティ」など、ソフト面でも会員を魅了する努力をします。
会員制のレストランなどは、「施設」「人的サービス」「商品提供」「コミュニティ」の複合で、それぞれの店の独自の魅力を確立しています。
設備の維持メンテナンスや固定費など、費用が最もかかる型といえます。
【施設型の会員制ビジネス例】
・フィットネスクラブ
・ゴルフ場
・飲食店
・レンタルスペース
・貸し別荘
2-2. コミュニティ型
趣味や興味が同じ目的の者を集めて、ビジネス展開するものです。
芸能人のファンクラブに代表されますが、例えば「韓流」や「車」、「旅行」など内容やジャンルは多岐にわたります。
会員同士の交流を図るだけでなく、先行販売といった会員限定の「情報提供」や、関連グッズなどの「商品提供」により、会員の集客や維持促進をします。
【コミュニティ型会員制ビジネス例】
・ファンクラブ
・サロン
・サークル
・共同購入
2-3. 人的サービス型
人的サービス型の会員制ビジネスとは、専門知識に基づいてノウハウを伝授するなど、アドバイスの提供をするものです。
コンサルタントやコーチなどに代表されます。
サービスを提供する側も享受する側も、「会員」や「会費」といった意識がない場合が多いですが、固定の月額で一定期間専門サービスを受ける仕組みは、会員制ビジネスのモデルといえます。
比較検討のしにくい性質のサービスのため、一度会員を得ればよほどのことがない限りは離れませんが、ダイエットやフルマラソンの指導といった数値目標が明確な場合は、目的達成と同時に終了することが多いため、常に新規集客に努める必要があります。
【人的サービス型会員制ビジネス例】
・コンサルタント
・コーチ
・講師
・セラピスト
・カウンセラー
2-4. 情報提供型
情報提供型の会員制ビジネスとは、一定期間に会員それぞれの目的に合致する情報を提供するものです。
メルマガや映画、音楽などの有料情報コンテンツを提供するもののほか、結婚紹介所などがこれに当たります。
有料情報コンテンツを提供する場合、月額は300円から1000円程度と少額ですが、カスタマイズの必要がないため、同じ情報を多数に発信することができ、会員母数が多いほど利益率が高まります。
また、映画や音楽の配信サービスなどで多い、一定額で利用し放題(上限設定のある場合も)のシステムは特に「サブスクリプション」と呼び、近年業種を問わず展開が増えてきています。
結婚紹介所の場合は会員によって提供する情報をカスタマイズする必要があり、また「人的サービス」も必要になってくるため、一般的に会員費が高額になります。
【情報提供型会員制ビジネス例】
・コンテンツ配信サービス
・結婚紹介所
2-5. 商品提供型
商品提供型の会員制ビジネスとは、有料会員になることで良い商品を購入したり、レンタルしたりできるものです。
購入タイプで有名なのはコストコです。そこで買い物をする非日常体験そのものが特別感を生むなど、会員であることそのものがステイタスにもなっています。
レンタルタイプでは、歴史の長いものではダスキンのリース式掃除道具などが有名です。ここ数年はファッションの分野で、月定額でレンタルサービスをする事業者が増えてきています。
会費でまとまった額が事前に収められるため、それを元に商品開発をしたり、仕入れをしたり、商品単価を決めることができます。
また、会員=固定客であることから、売れ筋商品の絞り込みなどのマーケティングを的確に行えるため、それにより大きな反響を生むことができるのです。
広義では化粧品やサプリメントの定期購入や頒布会、ガソリンスタンドの会員などを「会員制ビジネス」と呼ぶものもありますが、会員になるための対価を払わない場合が多いため、この記事では割愛します。
商品提供型会員制ビジネス例】
・掃除用具のリース
・ファッションレンタル
・シェアサイクル
・カーシェア
3. 会員制ビジネスが注目される理由
ここ数年、会員制ビジネスが注目を集めています。
この人気を支える背景は主にふたつあります。
- 安定的な収益を得られるため、採用している企業が増えていること
- 本業を逼迫しない労力の副業として、個人でも取り入れやすいこと
先の章でも触れましたが、商品やサービスがまだ売れていない段階で会費収入があるため、企業としては精神的にも金銭的にも余裕を持って商品開発や仕入れができます。
また、飲食店などでは無断キャンセルの防止策としても高い有効性があります。
専門知識を活用したメルマガなどの有料コンテンツの配信は個人でも始めやすく、SNSとの相性がいいため、急速に広まっています。
企業にとっても、個人でビジネスを始めたい人にとっても、比較的初期投資を抑えた形で始められるビジネスモデルであることが、近年注目を集めている主な理由となります。
4. 会員制ビジネスのメリット3つ
会員制ビジネスのメリットは、主に次の3つです。
- 収入が継続的に見込める
- マーケティングがしやすい
- 良質な客が集まる/客を選べる
それぞれ、具体的にみていきましょう。
4-1. 収入が継続的に見込める
毎月、月の頭には会費収入が見込めます。
もちろん、会費と会員の数によってこの金額は異なりますが、ある程度のまとまった額が「商品やサービスを売る前に」入ってきます。
しかもこの収入は、よほどのことがない限り、翌月以降もほぼ継続的に見込むことができるものです。これにより、生産や仕入れ、商品開発や販促などに計画的な投資ができるようになります。
そして継続的な収入は、あなた自身に精神的なゆとりを生みます。
そのゆとりは新規集客の施策や既存顧客へのさらなるサービスだけでなく、新規ビジネスの展開においても、自由な発想を生み出す大きな基盤になるのです。
4-2. マーケティングがしやすい
会員になってもらうことで、顧客のさまざまな情報を得ます。
属性や地域などのデータに加え、どのタイミングでどの商品やサービスをどれくらい買ったかの把握ができるようになるのです。
このデータは、新規集客の際の広告展開にも利用できますし、売れ筋商品の絞り込みや商品開発のほか、顧客満足を高めるための施策に活用ができます。
また数値データだけでなく、会員サービスの一環として、アンケートや座談会、各種交流会などを開催することで、直接会員の声を聞き、生のデータを採取することも可能になるのです。
「2回目利用の引き上げ」「3回目促進」など、一般的なビジネスでは、一度商品やサービスを利用した顧客にもう一度利用してもらうための施策が重要で、日々経営者の頭を悩ませるものとなります。
会員制ビジネスでは、この点がすでに「ほぼ約束されている」ため、次のステップへと進むことができます。
4-3. 良質な客が集まる/客を選べる
第3章でも触れましたが、飲食店において、会員制ビジネスを展開することで無断キャンセルがなくなったという事例があります。
会員は先に店に自分の情報を渡していますし、店を利用したくて会費まで払っているのですから、無断キャンセルには会員にとってデメリットしかないのです。
会員制ビジネスにすることによるこの「良質な客の集客効果」は、飲食店に限らず、すべての業種で共通です。
会費を払ってまであなたの提供する商品やサービスを継続的に得たいと思う顧客は、すでにあなたと対等な関係を築いています。
あなたの提供するものを楽しみに待っている方が会員になってくれるのです。
不当なクレームやキャンセルは、会員制ビジネスにすることで回避することができます。
5. 会員制ビジネスのデメリット2つ
もちろん、会員制ビジネスにもデメリットがありますので、しっかり押さえておきましょう。
主なデメリットは以下の2つです。
- 新規集客と並行して継続維持のための施策が必要
- 顧客管理が必要
それぞれを詳しく解説しましょう。
5-1. 新規集客と並行して継続維持のための施策が必要
会員制ビジネスの場合、会員数を増やせばその分だけ会費収入が増えます。
しかし、実際の運用では、会員数を「減らさない」ための努力が必要になります。
会員サービスが「思っていたのと違う」「そこまで必要なかった」といった場合、会員は退会します。すると当然、翌月の会費収入が減ります。
収入が減ると、新規集客のための積極的な施策もできなくなるため、会員数は減る一方となります。
仮に、顧客維持に経費をかけた場合と、顧客維持に経費をかけない場合を比べてみましょう。
条件は以下で揃えています。
- スタート時会員数20名
- 月会費5,000円
- 毎月の獲得新規顧客3名
- 新規獲得のための広告費10,000円/人
まずは、顧客維持のための施策に一人当たり月500円の経費をかけて、離脱率を5%に抑えた場合のシミュレーションを見てみましょう。
前月にかけた広告費のおかげで、翌月に3名の新規顧客がコンスタントに獲得できるという単純計算ではありますが、離脱率が少ないと、会員数は増加し、収入も増えていくのがわかります。
一般に、新規集客のための広告費よりも既存顧客の維持費用の方が安く上がるため、維持継続のための魅力的な施策を講じると、収益に大きな影響が出ます。
次に、顧客維持に経費をかけず離脱率が30%に上る場合のシミュレーションを見てみましょう。
一年で会員数が半減し、月に2万円の収益を上げるために、3万円の広告費をかけるという本末転倒な状況になっています。
最初に設定した会員特典だけでは飽きられてしまったり、競合に真似されて特典にはならなかったり、会員が退会する理由は変化しながら常に存在しているため、顧客にとって魅力的な企画を提供し続ける必要があるのです。
5-2. 顧客管理が必要
会員制ビジネスにとって、なくてはならないのが顧客管理です。
会員の顧客管理とは、それぞれの会員に対して「いつ・どのタイミングで・何がきっかけで・何を・いくら購入したのか」や「入会や退会の理由やタイミング」を分析することです。
どんなきっかけで入会し、どんなキャンペーンに反応したかなど、購買履歴からその行動パターンや意識を読み解きます。
CRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)システムを導入しなくても、事業規模が小さかったり、初めて顧客管理に取り組むような場合でしたら、EXCELでの入力・管理で充分です。
EXCEL入力の場合、基本的には顧客ごとに購買の年月日を記していきますが、販促キャンペーンのタイミングと照合できるようにすることで、それぞれの顧客の購買動機や入会・退会動機を推測し、同じ属性の顧客へのアプローチに活用します。
慣れないうちは、ただの数字の羅列にしか見えないデータから情報を読み解くことが難しいですし、仮定と検証を繰り返していく作業が必要になります。
6. 会員制ビジネスの成功事例
会員制ビジネスというと、すぐに思い浮かぶのはコストコ(小売業/年額4,000円)やAmazonプライム(通信販売業/年額4,900円)など、大手企業のケースでしょう。
しかしここでは、実際に会員制ビジネスを導入することで売り上げを伸ばしたり、収益を上げたりしている中小または零細企業の事例をご紹介します。
大掛かりな広告キャンペーンを展開することも、システム導入のための潤沢な資本もない全国の中小や零細企業の事例から、あなたのビジネスに具体的に役立つヒントを見つけてください。
6-1. 熊の焼き鳥/会員制焼き鳥店
(出展:熊の焼き鳥 祇園白川店)
2014年8月に一般的な焼き鳥店として大阪市北区にオープンしたこの店は、2016年4月から会員制ビジネスを展開。
多い時には月間100人を超える「無断キャンセル」に対する予防策として、会員制を取り入れました。
会員制にしたことで、当初の目的であった無断キャンセルがなくなったほか、「ドリンクは水だけ」という客がいなくなったことで客単価が1~2,000円上昇。
看板も表札もなく、会員は店から発行されたIDカードでロックを解除して入店するという厳重さで、「特別感」を演出しています。
会員になるためには店主や店員とのやりとりで「他の会員の迷惑にならないか」の選別・判定がされるほどの敷居の高さ。
名古屋と京都にも支店を展開し、日本でもっとも予約の取れない焼き鳥屋と言われています。
【熊の焼き鳥】
入会金:15,000円(会員からの紹介の場合10,000円)、電子カードキー8,000円
年会費2,000円
店舗サイト(祇園白川店):店舗サイトはこちらからご確認ください
6-2. Reno 801/会員制美容サロン
(出展:Reno 801)
Reno 801は、会員の「ビューティーパートナー」となり、ヘアケアだけでない総合美容を提供する美容サロンです。
美容室の集客というと、クーポン付き広告雑誌などへの出稿が主流です。できるだけ間口を広く開けて新規顧客を獲得しようという流れの中で、Reno 801は会員制ビジネスモデルを導入しています。
また、「美容室ジプシー」という、顧客がなかなか固定しない状況が一般的な美容室という業態において、その打開策としてのひとつの答えが「会員制ビジネス」となっています。
会員の美容をパートナーとして親身に考え、技術を惜しみなく提供してくれるのは、会員にとってもうれしいことですし、美容室としても固定客になってくれた方が顧客満足を引き出しやすいので、双方にメリットがあります。
【Reno 801】
年会費:ブラック30,000円、プラチナ150,000円
店舗サイト:店舗サイトはこちらからご確認ください
6-3. elio/会員制進学塾
(出展:elio)
学習塾や予備校は、もともと会員制のビジネスモデルを備えているものです。
しかしelioはさらに生徒とその家族に「会員資格」を与えることで、より強固な結びつきを形成している会員制難関受験専門塾です。
説明会や体験入学、面談を経て晴れて会員になったものだけが学ぶことのできるelioのシステムは、単に情報やテクニックを塾側から一方通行で生徒に送るものではなく、生徒家族と塾とが二人三脚で合格を目指します。
【elio】
入会金:お問い合わせください
会費:お問い合わせください
店舗サイト:店舗サイトはこちらからご確認ください
7. 会員制ビジネスはこんな人におすすめ
会員制ビジネスは、すべての業種で導入が可能です。
商品やサービスの再購入や継続利用を促したいのであればどんな業種でも、会員制ビジネスの仕組みを自分のビジネスに組み入れる検討ができます。
そのため、以下のような方におすすめです。
- 少額でも安定的な収入を得たい方
- メンテナンス程度の少ない労力で収入を得たい方
- いざという時の支えとなる事業の柱が欲しい方
上記の方の中でも、特に会員制ビジネスをお勧めしたいのは「すでに店舗を構えている方」です。
第2章の「会員制ビジネスの種類」でお伝えしましたが、「施設型」の会員制ビジネスは、もっとも固定費や維持費用がかかるものです。
すでに店舗を持っている方は、その施設を最大限に活かし、会員サービスのためのサロンを定期的に開催したり、商品やサービスの具体的な使用方法を示したりすることができます。
また、「すでにその店舗に足を運んだことがある」というのは、顧客の心理的にも大きな安心感を起こし、有利な働きをします。
そして会員ビジネスの展開により継続的に見込める一定の収入があると、テナント料などの固定費の支払いにおいて精神的に大きなゆとりを生み出すでしょう。
もしあなたがエステや美容室、歯科・整体などの各種治療院、飲食店、各種小売など店舗を構えて経営しているのでしたら、会員制ビジネスの導入を強くおすすめします。
8. 会員制ビジネスを始めるための5つのステップ
では実際に、会員制ビジネスを始めるには、どのような手順でどんなことをすれば良いのでしょうか。
この章では、会員制ビジネスの始め方を次の5ステップでご紹介します。
- 提供する内容を考える
- 価格を決める
- 課金システムを導入する
- 会員を維持する仕組みを考える
- 顧客管理の用意をする
順に詳しく解説していきましょう。
8-1. 提供する内容を考える
まずは提供できる商品やサービス、コンテンツ、人員、情報などのビジネス資産を洗い出します。
ビジネス資産を一望し、第2章で解説した5種類の会員制ビジネスを参考に、特化型や複合型のビジネスモデルを考えます。
会員から見て魅力のある内容であることはもちろんですが、継続的に提供可能な会員特典であることも大切です。
最低でも3年以上は提供し続けることができるような、試算の立つものを用意しましょう。
8-2. 価格を決める
提供する内容と価格が見合うことは、当然ですがとても重要です。
会員制ビジネスで継続的な支払いを求める場合は、提供する価値が支払額の5~10倍以上魅力的に見える設定をします。
独自性の高い、そこでしか得られない価値であれば、たとえ一見して会費が高額であったとしても、価値を認めてくれたお客様は喜んで会員になります。
8-3. 課金システムを導入する
前払いで継続支払いをしてもらえる仕組みづくりをします。
Wordpressの知識があれば自分でも決済のできるサイトを作ることはできますが、初期投資が少なく、手間ひまをかけずに簡単に取り入れられるものをご紹介します。
8-3-1. 銀行振込
会員自ら指定口座への振込をしてもらう方法です。半年払いや年払いなどの一括まとめ払いに向いています。
継続的な利用を見込みたいのであれば、ボリュームディスカウントを効かせることで会員側にもお得感が生まれます。
◼︎メリット
管理できる人数であれば、払込票の発行をせずに指定の金額を振り込んでもらえるよう依頼するだけで済みます。
◼︎デメリット
会員になろうと思うタイミングと支払いのタイミングがずれるため、支払い時に再考される場合があります。
また、相手が行動してくれなければ振り込まれないため、回収が遅れたり滞ったりすることもありがちです。
会員側から見ても、会費が少額の場合に振込手数料の割合が高くなったり、ある程度高額であればクレジットカードのポイントをつけたいという希望が叶わなかったりと、融通が利かないと感じる場面があります。
8-3-2. 口座振替(自動引き落とし)
金融機関に振替依頼をすることで、会員の指定口座から会費を毎月自動的に移動させます。
振替依頼には銀行の振替依頼申込書を使うものと、決済代行会社を通してwebで申し込みをするものがあります。書面での手続きは事業者が仲介に入って書類不備などの対応をしなければいけないため、決済代行会社でweb申し込みをする方が事務作業が少なくて便利です。
◼︎メリット
最初に会員に手続きしてもらうだけで、継続的な収入が見込めます。また、自動引き落としなので口座に指定の金額以上あれば回収が遅れることはありません。
◼︎デメリット
決済代行会社の利用手数料がかかります。
8-3-3. クレジットカードでの引き落とし
決済代行会社に依頼し、会員のクレジットカードに毎月指定金額の請求をします。
◼︎メリット
請求書の発行を自分で行わずに済みます。会員側からみると、クレジットカードのポイントが貯まるため、同額の支払いであれば振込や振替より好まれる傾向があります。
◼︎デメリット
決済代行会社の利用手数料がかかります。
8-4. 会員を維持する仕組みを考える
第5章でもお伝えしましたが、会員制ビジネスにおいて、顧客の継続維持は非常に重要な課題になります。
同じ商品やサービスを中心に据えたまま、その周辺で顧客を飽きさせない魅力を提供し続けるのです。
継続維持の代表的な策としては、以下のような方法があります。
- 会員同士のコミュニティを作る
- オフラインのイベントを開催する
- 退会者に退会理由を聞く
特に、退会理由を掘り下げることで現会員にとっての共通的な潜在的ネガティブ要因が見つかり、それを排除することで満足度が上がります。
会員の継続維持のための各施策は、会員制ビジネスでもっとも頭を使う一方、醍醐味とも言える部分です。
8-5. 顧客管理の用意をする
初期は大掛かりなシステムを組む必要はないので、Excelで顧客の行動を記録します。
- 入会日
- 購入日
- 購入内容
- 購入金額
- イベントなどの参加有無
顧客ごとの上記データとともに、こちらがキャンペーンを打った際にどんな動きをしたかが一目でわかるようになっているものが望ましいです。
データがある程度貯まってくれば、顧客を購買額や頻度などでグループ分けをして、上級会員などへのアップグレードを勧めることもできます。
9. 会員制ビジネスを始める前に知っておきたい「退会防止」の事例
顧客の継続維持のための施策が重要であることは、すでに何度もお伝えしてきました。
この章では、実際に企業が行った「退会防止」策の、成功事例と失敗事例をそれぞれご紹介します。
厳密には「会員制」というものではなく、単なる定期購入のビジネスモデルも含まれていますが、どれも現在の顧客を継続させるための施策事例です。
成功事例だけでなく失敗事例も合わせて知ることで、あなたの会員制ビジネスの参考になさってください。
9-1. 成功事例:Oisix
(出展:Oisix)
Oisix(オイシックス)は、有機や無添加食品、ミールキットの通信販売を行う食品宅配専門のネットスーパー。2006年の設立から、資本提携や株式交換などを行い、着実に規模を大きくしている優良企業です。
同社は顧客データを活用し、解約率を2割減少させることに成功しました。
選択式または自由記入式の解約理由は「引っ越しをしたから」などさまざまでしたが、配達記録を丁寧に読み取った結果、本当の理由が判明。
「オイシックスの定期配送では、商品発送前に注文内容を変更・キャンセルできるが、(本当は変更したかったのに)変更なしのままで届けられてしまうことが解約につながる要因だと、データから分かった。」(同社CMO・西井敏恭氏)
同社はこの分析を元に、「注文変更期限を遅くする」や「締め切り前にメールを出す」といった具体策を実行。これにより、退会率を2割下げることの成功したのです。
9-2. 成功事例:WOWOW
(出展:WOWOW)
日本初の有料放送を行う民放衛星放送局として開局したWOWOW社は、新規契約数を増加させるため、様々な新規向けのキャンペーンを展開していました。
キャンペーン効果もあり、順調に新規契約数を伸ばしていきましたが、新規契約人数よりも解約人数が多い期間が続きました。年間56万人もの会員が新規加入しているのに、一年後にはそのうち5千人しか継続していないという状態です。
売上と利益を確保するため顧客データという「事実」に向き合い、そこから見えてきた顧客の動きは以下のふたつ。
- 「無料期間」を理由に入会した会員は、長期間の契約になりづらい
- 解約理由は「目的の番組が終了」「見る番組がない」「見る時間がない」が常にトップ
しかしこのことが分かっていても同じ状態が続き、そこからの具体的な打開策は見出せないままでいました。
そこでさらに、実際の解約者と面談式のインタビューを行うことで、顧客の深層にあるニーズや要望を探り出したのです。
ここで得た「顧客の深層心理」を自社コンタクトセンターのオペレーターに共有し、本音を導き出しながらニーズを叶える別の提案をすることで、解約抑止率を上げることに成功しました。
9-3. 失敗事例:携帯電話事業者(南米)
南米のある携帯電話事業者が、自社の顧客65,000人を対象にテストを行った結果をご紹介します。
「料金の支払額が大きくて損な使い方をしてしまっている顧客」を2つのグループに分け、次の施策の効果を比較しました。
グループ1:クーポンを提供して、最適な利用プランを推奨
グループ2:何もアプローチしない
3ヶ月後の解約率は以下の通り。
グループ1:10%
グループ2:6.4%
お得なプランを推奨する施策を行った顧客の方が、何も提案しなかった顧客よりも解約率が高くなってしまいました。つまり、施策を行ったことで、かえって解約率を高くする結果を産んだのです。
これは、ほかのプランという選択肢の提示をきっかけに、顧客は自社の提案するプラン以外にも、ほかの携帯電話業者のプランまでもを検討対象としてしまったからなのです。
良かれと思って行った解約防止のための施策が、裏目に出てしまった希少な失敗事例です。
10. 会員制ビジネスを始める人におすすめの本3選
会員制ビジネスを始めるあなたに、読んでおくべきおすすめの本を3冊ご紹介します。
どれも手元で繰り返し開いて、具体的に参考にすることのできる良書です。
これから事業を始めたい方も、すでに事業を行っていて新しい柱の構築をお考えの方も、どちらもぜひ一読ください。
10-1. シリコンバレー発 会員制ビジネス企業術
アメリカの会員制ビジネスの事例を細かく用いて、会員制ビジネスの基本から実際の起こし方、既存ビジネスへの取り入れ方などが詳しく解説されています。
これから会員制ビジネスを始めたい方にとって重要な「会員をどのように集めるか」から、すでに会員制ビジネスを展開している人にとっても役立つ「財務状況の変化」まで、会員制ビジネスに関わるすべての人にとって有益な解説が載っています。
【シリコンバレー発 会員制ビジネス起業術】
著者:ロビー・ケルマン・バクスター
出版社:ダイレクト出版
発売日:2015年
新書価格:3,299円
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10-2. ストックビジネスの教科書 プロフェッショナル
ストックビジネスとは、不動産収入や配当など、実労働を伴わずに安定的な一定収益をもたらすビジネスのこと。会員制ビジネスも、このストックビジネスの範疇にあります。
前著で「ストックビジネス」と「フロービジネス」を分けて概論を示した著者が、より具体的、実際的な事柄を示した実践編。
学者による机上の空論ではなく、実際の経営者の目線で書かれています。
会員制ビジネスをお考えの方は、合わせて読んでおきたい一冊です。
【ストックビジネスの教科書 プロフェッショナル】
著者:大竹啓裕
出版社:ポプラ社
発売日:2016年11月16日
新書価格:1,870円
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10-3. サブスクリプション実践ガイド
サブスクリプションとは、「一定額で一定期間使い放題」のシステムのこと。より広義な会員制ビジネスにあたるものです。商品やサービスなどを中心とした会員特典が明確なため、始めやすく会員を集めやすい形の会員制ビジネスと言えます。
最近流行りのビジネス用語のため、類似本もたくさんありますが、本書はサブスクリプションビジネスの概要から経営分析、顧客の継続維持についてまで詳しく紹介している良書です。
【サブスクリプション実践ガイド】
著者:佐川 隼人
出版社:英治出版
発売日:2019年7月3日
新書価格:1,760円
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11. まとめ
今回は、会員制ビジネスの基礎知識から実際の事例、始め方までご紹介しました。
会員制ビジネスの主なメリットは3つ。
- 収入が継続的に見込める
- マーケティングがしやすい
- 良質な客が集まる/客を選べる
このメリットによって、会員制ビジネスを始める意味がご理解いただけたことでしょう。
そして会員制ビジネスの始め方についても、次の5つのステップにまとめました。
- 提供する内容を考える
- 価格を決める
- 課金システムを導入する
- 会員を維持する仕組みを考える
- 顧客管理の用意をする
また、会員制ビジネスで非常に重要である「顧客の維持管理」については、成功事例だけでなく失敗事例も合わせてご紹介することで、ビジネスを始めた後にもお役立ていただけるものになったと思います。
どうぞこの記事をあなたの新たな事業にお役立てください。