著者対談 福井寿和 「全店舗閉店して会社を清算することにしました。」

最終更新日:2020年12月14日

小林:今回の著者対談では、140万PVのブログがベースとなった『全店舗閉店して会社を精算することにしました。』を執筆された著者であり、経営者の福井寿和さんにお話を伺っていきます。福井さん、よろしくお願いします。

福井:よろしくお願いします。

noteで140万PV超えのブログを書籍化

小林:人生には「上り坂、下り坂、まさか」の3つの坂があると言われますが、皆さんもこれからご自身の人生や仕事、いろんなことについて、どうやって意思決定していけば良いのかということを、今日は福井さんから学んでいきたいと思います。

福井さんは、会社の売上がどんどん右肩上がりに伸びて、いよいよこれからだ、さらに伸ばしていくぞ、と飲食店を5店舗経営されていましたが、経営の力など全く関係のない「まさか」に直撃し、コロナウイルスの影響を思い切り受けられました。

そこから今に至るまで10ヶ月の間で、普通であれば10年分くらいかけて経験する様々な出来事を凝縮して経験され、スピーディーな意思決定をされて、今新たなチャレンジをされています。

「事実は小説よりも奇なり」と言いますか、読んでいない方はぜひ読んでいただきたいです。この経験は、おそらく私たちはなかなか出来ない、出来ればそんなにしたい経験ではないと思います。福井さんはそんな状況に実際に直面して、それを乗り越えて、関係者の幸せを最適な形で守られたと思います。

その意思決定を疑似的に体験することで、今上り調子の人は少し冷静になれるでしょうし、今上手くいっていない人もまだまだやれることもあると思えるでしょうし、そこまで悲観することはない、と勇気をもらえるのではないかと思います。

では、ここから福井さんにバトンタッチをして、人生とビジネスの意思決定、スピード経営についてお話を伺っていきたいと思います。福井さん、よろしくお願いします。

コロナの影響を受け飲食店を廃業

福井:福井と申します。まずは、私のことをご存知ない方もいらっしゃると思いますので、自己紹介していきたいと思います。33歳で、今年の8月に株式会社グラバーを立ち上げました。出身は青森県です。起業する前は、日本NCR株式会社でシステムエンジニアとしてキャリアスタートしました。

その後、コンサルティング会社でPMOという仕事を経験しました。その中で、現場が変わる、お客様が良くなっていく経験をして、「これを地元の青森に還元したい」と思い、2014年の春に青森に帰りました。

合同会社イロモア創業の前に、何とか地域を変えてやろうという想いで、27歳で青森市議会議員選挙に立候補しましたが、落選してしまいましたので、政治ではなく経済の分野で地域活性をしようと思い、会社を立ち上げました。

当時は「コワーキングが欲しいな」と思ってやったのですが、これが見事に空振りをし、「まずい、資金が尽きる。やばいな」と思って飲食店を始めました。大学の時に3年半ほど中華料理屋さんでバイトをしていたので、その経験をもとに「カフェ202」というカフェをオープンしました。

飲食を始めて、月商は11万円でした。家賃が10万円ほどだったので大赤字でした。そこからどんどん積み上げて最後は月商200万円くらいまで成長させました。

とんとんと事業が割と計画通りに進み、合計で青森と仙台に5店舗開業をしました。さらに拡大していこうと思い、大手の商業施設からも声をかけていただいて、本当なら今年12月に出店する話を進めていたところで、コロナウイルスがきてしまいました。「これは事業が成り立たない」と思い、4月末に閉店をして会社も清算しようと決意しました。

廃業の経験を書いたnoteがバズった

その経験を『全店舗閉店して会社を清算することに決めました』というふうにnoteに書いていると、2日間で140万PVを超えてしまって、一躍時の人になりました。会社を畳んだので、この経験を活かして株式会社グラバーを立ち上げて、今またビジネスを始めています。

先日友人と呑んでいて、その友人がばったり知人の経営者の方と会って私を紹介してくれたのですが、その方も私を知っていてくださり、自己紹介が省けて良かったという経験があります。一度バズるとそのような経験も出来ます。

飲食関係者だけではなく、いろんな著名人の方、政治家の方にも読んでいただきました。未だにアクセスが結構あります。Twitterのトレンドに取り上げられたり、News Picksなどにもいろんな方からコメントをいただいて、話題になりました。「売れたら親戚が増える」といった感じで、その日はたくさんの友達からLINEがきました。

そんなバズり方をして、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などいろいろなメディアに取り上げていただきました。webメディアでは、東洋経済やプレジデントなど堅めのメディアにも「倒産や廃業ということが珍しい、それを前向きに発信している社長がいない」ということで取り上げていただきました。

世の中のトレンドとしてもコロナでこれから倒産が増えるかもしれない、というところに上手くはまって、私が発信していることを取り上げていただきました。そして、11月2日に書籍を出すことになりました。

実はnoteで書いたタイトルは「全店舗閉店して会社を清算することに決めました」です。しかし、本のタイトルは「しました」になっています。

本は原稿を書いて、編集の方がチェックして、内容を精査して、誤字脱字や表現の間違いなどを校閲しますが、校閲に出して私も編集した人も「これは、することに『決めました』だったよね」という話になって、実はタイトルを間違えたという本です。

やはり会社を廃業、清算する経験はあまりないので、苦しい状況にいる人や、これから事業を始めるけれどつぶれるかもしれないという不安を持っている方に、ぜひ読んで欲しいと思って書いた本です。

「倒産」というブラックボックスを変えたい

なぜそれを伝えていかなければいけないのかというと、倒産とはブラックボックスで、倒産するとどんな人生になるかを誰も知らないですし、テレビなどで取り上げられるような「めちゃくちゃ辛い人生を送っています」といったような情報しかありません。

本当はそんなことではなくて、倒産しても生きている人はいっぱいいるわけです。「私みたいな人がいる」ということを伝えていかなければいけないと思っています。チャレンジを阻害する要因にもなるので、どんどん発信しなければと思っています。

帝国データバンクの情報では、2019年の倒産件数は8,000件あります。毎月700件、1日では23件倒産しています。倒産は全く特別な話ではなくて、本当は身近な話です。ただ、倒産は触れてはいけないようなイメージがあって、それがブラックボックスになってしまっています。

「それは良くない」という想いで書籍も出しましたし、メディアにも出て積極的に発信しています。

もう1つ、私自身がそうでしたが、周りに倒産経験者がいるととても心強いのです。倒産しても「こうなるのだ」とわかっていれば、倒産が怖くなくチャレンジ出来ます。「私のような人がいれば心強いだろうな」と思ってガンガン出ていっています。

意思決定を最速化する スピード経営

この経験をふまえて私がどんな新しいビジネスをやっているのかをお伝えして、皆さんの気づきに少しでもなればいいかなと思います。『今日の意思決定を最速化する スピード経営』ということでお話していきます。

今回、私が会社を清算した時はめちゃくちゃ早く意思決定をしました。そのおかげでいろんなことが好転していきました。その経験をふまえて、経営者の方は意思決定を早くすることが絶対に必要だということを伝え、それをビジネスにしています。

ほとんどの中小企業では、社長は現場から離れられずにずっと会社を経営しているので、結局頭打ちになって、何もかも遅れていくということが起こっています。これは、実際に私が経営をしてわかりました。

スピード経営とは、「現場から離れて会社をちゃんと組織化しましょう。自分が経営に専念出来る環境を作って、先行きが不透明で十分な情報がない中でも、ちゃんと意思決定をしていって、業績を伸ばしましょう」というコンセプトです。

そもそも、なぜ会社経営に意思決定が必要なのでしょうか。「意思決定が大事だね」ということを見聞きしますが、目標を達成するために複数の代替案から最善の解を求めようとする、選択するということが意思決定だと言われています。(ウィキペディア)

例えば今はコロナ禍で、これからも感染者が増えていくと言われています。売上が低迷している状況下において、経営者がとるべき案は、いろいろあると思います。広告を強化してお客様を増やそうとか、休業しようとか、銀行からお金を借りようといったことです。

選択肢があるだけでは何も始まりません。自分が何をするかを決めなくてはいけません。「銀行からお金を借りよう」、「助成金や補助金を活用しよう」、「不採算があれば撤退しよう」と決めます。これで初めて前に進むわけです。

「よし、銀行にお金を借りにいこう」と行動して、会社がまた前進します。意思決定をするまで何も動きません。だから、ビジネスをするには意思決定が超大事なのです。普段、特に考えずに会社経営をしている方や、中小企業の方などは何となく決めてしまっているのだけれど、「前に進めるためには意思決定が大事だ」ということを伝えています。

スピーディな意思決定が必要

では、なぜ意思決定のスピードを早くしなければならないのか。理由は3つあります。

1つ目は、決定の正しさは悩んだ時間と全く無関係ということです。調べたりするのはまだわかりますが、悩む時間の大半は気持ちの問題です。悩んだ時間に決定の正しさは比例しません。

例えば、お題を出して「8時間後に決めてください」と言われて決められなかった。そこからまた8時間悩んで16時間を使って決定しても、正しさが2倍にはなるとは限りません。ですから、とにかく早く決めるということは大事です。

2つ目に、事業環境の変わるスピードはとにかく早いです。2020年3月時点で「コロナがやばい」という話がありましたが、4月に緊急事態宣言が発令され、飲食店にお客さんが全く来なくなることなんて誰も予想はしなかったでしょう。

「来週から緊急事態宣言です」と言われて、「その準備をしていないから待ってくれ」なんて言っても、誰も待ってくれないのです。自分の決定スピードに世の中の事業環境は合わせてくれません。事業環境の変化が早いなら、とにかく意思決定を早くやっていかなければ取り残されてしまいます。

緊急事態宣言が出ているのに、いつもと変わらないスタッフをそろえて、「待っています」と言うことなどありえません。人数を減らして最小限の経営をするために、どんどん早く意思決定をしていきましょう。

3つ目は、実行しないとわからないことが多すぎるということです。すごく悩んだとしても、やってみないとわからないことが多いです。わからない中でも見切り発車でやると決めたらやってみる、だめなら変えてみるというスピーディーな意思決定が大事です。

今は「VUCA(ブーカ)」といわれる、とにかく予測出来ない時代です。正しく決定するなど、誰にもわからないし出来ないのです。

世の中の中小企業経営者はとにかく、「良い、正確な意思決定をしたい」と思っています。しかし、VUCAの時代だから決められない。それならばスピーディに意思決定をしていきましょう。お客様に受け入れられたら続けていけば良いし、だめだったら修正して変えていけばいいのです。

私のバイブルでもある、ドラッカーの『マネジメント』では、「リーダーシップは正しい事をすること」「マネジメントは物事を正しく行うこと」だと書かれています。正しいこととは、法令や倫理的、会社ルールの遵守など、悪いことをしてはいけないということで、正しいことをするのがリーダーシップです。

そして、経営者の仕事はマネジメントです。ならば、物事を正しく行うことが経営者の仕事だということです。これを解釈すると、「意思決定したことを正しく行うことが、ビジネスをやっている経営者の仕事です」ということになります。

意思決定の正しさは無関係です。決めたことが正しいかどうかは関係なく、決めたことを正しく行うのが社長の仕事なので、「さっさと決めてやろうぜ」、「ドラッカーさんも言っているからその通りにやりましょう」と私は中小企業の社長に伝えています。

意思決定のために内部環境の土台を整えていく

とはいえ、意思決定するには土台がないと出来ません。今、皆さんがいきなり「トヨタの社長をやってください」と言われても多分出来ないですよね。経験や知識など土台があってこそ意思決定が出来ます。なので、「土台を作っておく必要はある」とも伝えています。

経営者の置かれている状況を要素分解してみましょう。まず、外部環境です。VUCAと呼ばれる外の環境、どうなるかわからない環境の中で意思決定をしなければなりません。

これは私が作ったフレームワークで、情報(I)知識(K)感情(E)目的(A)」の頭文字を取って、IKEA(イケア)と呼んでいます。これらが必要です。

いろんな情報を得て、知識をつけなければいけませんし、苦手や得意といった感情も意思決定に関わってきますし、何を成したいのかという目的も必要です。ただ、VUCA時代にはどうなるかわからないので、ここに力を入れていても正直それで良いとは言えません。

そこで、内部環境です。これは、結構確実性があります。同じIKEAであってもコントロール出来るものが多いです。情報は吸い上げれば良いし、社内の業務や経営知識は身につければ良いし、感情は自分でコントロール出来ますし、目的は自分で作っていけば良いですよね。なので、ここに注力しましょう。

正しい意思決定をする必要はないと言いつつも、出来るだけ精度は高めたいので、内部環境の土台をしっかり作っていきましょう。土台をしっかり作ることで、業績アップをしていきましょう。

まとめると、情報は売上の数値や従業員の可視化された行動などのことです。知識は、経営知識や業界知識、技術です。感情は、経営者として大切にしたいことです。時間的・体力的・金銭的余裕がないと感情がぶれてしまいますので、これらも大事です。

売上や従業員の行動といった情報の部分は、仕組みで作れます。知識は知っている人から習って勉強をすれば良いです。大切にしたいことは何かと考えれば良いし、余裕は仕組みを作って経営者の時間を確保すれば良いでしょう。目的も、決めたり真似たりすれば良いでしょう。

結局、意思決定を最速化する極意は、社内のIKEAをどうやって構築するかにかかっています。私は、これをお客様に対して支援する仕事をしています。

VUCA時代だからこそ、内部環境を強化しスピーディな意思決定を

最初の話に戻ると、社長が現場から離れて、会社を組織化することで、社長依存から脱却して、経営に専念出来る環境を作り、先行き不透明な中で意思決定をしていきましょうね、ということです。だからIKEAは大事なんです。

外部環境のことは置いておいて、内部環境をしっかり強化して、意思決定をして業績を伸ばしていく。実際にコンサルティングで入っている会社では、どんどん社内が変わっていっています。従業員からも「変わって良かったです」と言われるような効果が出ています。

小林:今の話を、教科書的な話として聞くのか、自分ごととして聞くのかで全然受け取り方が変わるなと思います。

先日受講した、海外の大学のオンラインコースで「豊かな国が弱いリーダーを作って、弱いリーダーが国を滅ぼし、滅んだところにまた強いリーダーが生まれる」という話がありました。まさに福井さんは、強いリーダーだなとお話を聞いて思いました。

福井さんは、内部のIKEAをどのようにマネジメントしてきたのでしょうか。福井さんは、5店舗経営をして売上も順調に伸ばしてきて従業員もたくさんいる中で、辞める選択は難しいと思います。そこで、どうやってスピーディーに意思決定をされてきたかを教えていただけますか。

福井:清算した会社は5店舗経営していたので、私は現場に行けません。動的に売上や従業員の行動が集まる仕組みを作っていました。私は現場に一切出ないで、リモートワークでずっと経営に専念していました。

常に毎日の数字も月次の数字も見られる環境にいて、このまま売上が下がっていったら利益やキャッシュフローがどうなるかを冷静に見極められる環境にいました。すると、どう考えても新たにお金を借りたりしなければ会社が立ち行かない、ということがわかるわけです。

新しくお金を借りてやっていけるかと言えば、お金が返せないわけです。元々そのような計画になっていませんからね。ならば、お金を借りて何とかやるのか、すぱっとやめるのかのどちらかであって、最後に邪魔するのは感情です。

今までの想いや「もったいない、畳んだあとにどうしよう」といった想いがありますが、事実として立ち行かないのは決まっています。であれば、やめるしかないと会社を清算することをスピード感を持って決められました

小林:ありがとうございます。まだこの本をご覧になっていない方は、こちらからご覧ください。(『全店舗閉店して会社を精算することにしました。』)福井さんはTwitterやnoteもされていますので、今後の情報収集のためにフォローもしていただきたいと思います。

「コロナウイルスがいつ終息するか」と外部環境の変化を待っていても、それはアンコントローラブルなことなので、ぜひ皆さんもそれぞれの人生とビジネスに対して、どうやって自分のコントロール領域のIKEAをマネジメントしていくのか、ということに取りくんでいただけたらと思います。

福井さんどうもありがとうございます。

福井:ありがとうございます。

・書籍『全店舗閉店して会社を精算することにしました。』
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